サンドウィッチマン、優勝おめでとう!今年のM-1は、「本命」と目されていたコンビの調子が悪かったなと感じた大会でした。しかし、
吉本興業が主催した「M-1」において、吉本興業ではない、しかも小さな事務所の無名のコンビが優勝をさらっていってくれたことで、若い人に夢を与えてくれたと感じますので、これでよかったな、と素直に考えています。
「トータルテンボス」「笑い飯」「麒麟」「ハリセンボン」「キングコング」「スピードワゴン」・・・早くから活躍して知名度も抜群、実力も申し分ないコンビが、なぜ「無名」のコンビに負けたのか。
それは、
「忙しすぎた」の一言に尽きると思います。
「サンドウィッチマン」も、私も笑い転げるほどおもしろく、「なぜ敗者復活なのか」という感じでしたから、
上記に掲げた知名度抜群のコンビが本調子でも優勝していた可能性は十分あります。なので、
決して「伏兵にやられた」というものではないと思います。
「笑い」とは、「一瞬の期待はずれ」で笑いを起こすものであって、「考える手間」をもたらした瞬間すべてが終わってしまいます。従って、台詞を噛んだり、あるいは途中で流れが止まってはいけない。
特に漫才は、ひとつの「テーマ」があり、その「テーマ」に従って「期待はずれ」を起こすことで笑いをもたらすものです。しかも、2人で行う。当然、コンビで会話のタイミングや流れをスムーズに流すようにしなければならないわけです。
この作業は、5分10分でできるものではありません。
ネタをつくるだけでも数日、それを練習するのにも数日は最低でもかかります。従って、ネタを考えるときや練習するときは、自宅やホテルで缶詰状態になるケースが多いようです。
昨年優勝した「チュートリアル」や、一昨年優勝した「ブラックマヨネーズ」が漫才の番組に出てこないのは、
要するに「ネタを作る時間がない」ということです。それ以外にも、上記に掲げたコンビは、やはり出演番組が多く、ネタをまともに作る時間が確保できないという事情があります。
そんな中で、笑い転げるネタを展開してくれた「キングコング」「トータルテンボス」は、私は賞賛に値すると思います。(特に「ハリセンボン」は、よくM-1に出演したな、と思えるほど時間がなかったと思いますが・・・。)私が個人的に「これはおもしろいなぁ」と思った名人芸は、
『やすきよ』でしょう。横山やすしと西川きよし。この2人「ダブルツッコミ・ダブルボケ」の後継は、「笑い飯」になるのかなと思いますが、
この2人の凄さは、『間の取り方』と『緩急つけた会話』です。単なるしゃべくり漫才でもない、ケンカ漫才でもない、数分の短い時間内で喜怒哀楽織り交ぜた漫才は、まさに天才といっても良かったと思いますが
、さらにこの2人の凄いところは「アドリブを生かす」という技術。ネタあわせを相当やっても、互いにアドリブを入れて観客を自分に引き寄せようという野心があったせいか、
ネタどおりには絶対にいかなかったそうです。それでも、相方はそのアドリブにあわせたツッコミやボケを瞬時にして、ストーリーに矛盾を生ませず、しかも時間内で漫才を終了させて、観客を笑わせながらも番組をきちんと作り上げる。
普通、漫才は、ネタをつくったりネタあわせをしなければなりませんから、『違う番組で同じネタ』をするケースが多く、「あ、これ、前に見た」っていうのも多いですが、
「やすきよ」の2人は、「同じネタ・同じ題」であっても「違う漫才」になってしまうんですね。
かつての「笑っていいとも!」でのタモリと明石家さんまのコーナーは、そもそも台本はない。しかも、一度喋ったら終わらないという感じでしたが、きちんと生放送の時間内でネタが終わっていましたね。これはタモリの腕の凄さでしょう。
最近は「一発芸」で「使い捨て」にされる芸人が多いようですが、
安易に一発芸に走るのではなく、こうした名人芸を目指して努力する芸人が増えてきてくれれば、「お笑い」は「ブーム」ではなく「文化」として定着していくんだろうと思います。
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